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手話通訳者の皆さん、教養の旅に出ませんか? 専門性を深める新たな一歩

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手話通訳という仕事は、単に音声を手の動きに、手の動きを音声に置き換えるだけではありません。
そこには、言葉の奥にある文化、感情、そして人々の人生が詰まっています。
私たちは、聞こえない人と聞こえる人の間に立ち、コミュニケーションの橋渡しをしています。
その役割を真に果たすためには、手話の技術だけではなく、多岐にわたる教養を身につけることが不可欠です。

この記事では、手話通訳者の専門性をさらに高めるためのヒントとして、ピアカウンセリングピアスーパービジョンという二つの重要な概念に焦点を当ててみたいと思います。

なぜ、手話通訳者にピアカウンセリングの知識が必要なのか

私たちは日々の通訳現場で、様々な状況に直面します。
喜び、悲しみ、怒り、不安……。
通訳を通して、当事者の方々の感情を追体験することも少なくありません。特に、深刻な内容やデリケートな相談場面では、通訳者自身が心の負担を感じることもあります。

このような時、カウンセリングの知識は強力な武器となります。
特に「ピアカウンセリング」は、同じ課題や立場を共有する仲間同士が支え合うアプローチです。
手話通訳者がこの知識を学ぶことには、次のような大きなメリットがあります。

  • 共感と傾聴の質の向上: カウンセリングの基本は、相手の話をただ聞くだけではなく、その感情や背景を深く理解することにあります。このスキルは、通訳現場における当事者の言葉の奥にある意図を読み解く上で非常に役立ちます。例えば、当事者が複雑な心境を表現している時、単に手話の形を追うだけでなく、その感情をより適切に、そして丁寧に通訳できるようになります。

  • 当事者への心理的サポート: 私たちは、通訳現場で当事者の心理的な苦悩に触れることがあります。その際、カウンセリングの知識があれば、相手が抱える問題に対して、より適切な言葉かけや、寄り添う姿勢を示すことができます。もちろん、私たちは専門のカウンセラーではありません。しかし、その知識があることで、安易なアドバイスではなく、相手の自己決定を尊重しながら、必要な情報や専門機関を紹介するなどの適切な対応が可能になります。

  • セルフケアの技術: カウンセリングは、相手を助けるだけでなく、自分自身の心をケアする技術でもあります。通訳現場で受けたストレスや感情的な負担を適切に処理する術を身につけることは、長くこの仕事を続けていく上で欠かせないことです。

ピアカウンセリングの知識は、単に通訳の質を高めるだけでなく、私たち自身の心の健康を守るための盾にもなります。

学んで終わり? 資格取得という次のステップ

「ピアカウンセリングについて学ぶ」という考えは素晴らしい第一歩です。しかし、さらに一歩進んで、「資格の取得」を考えてみてはいかがでしょうか。

資格取得は、単なる知識の習得にとどまりません。
体系的にカリキュラムを学び、実践的な演習を繰り返すことで、知識が血肉となり、確かなスキルとして身につきます。

  • 信頼性の向上: 資格は、私たちが専門的な知識とスキルを持っていることの証明になります。これは、私たち自身の自信に繋がるだけでなく、周囲からの信頼も高めます。

  • ネットワークの拡大: ピアカウンセリングの資格講座や研修には、様々な背景を持つ人々が参加します。手話通訳者以外の専門職(医療、福祉、教育など)と出会い、異なる視点から学ぶことは、私たちの視野を大きく広げてくれます。

  • 活躍の場の広がり: ピアカウンセリングのスキルは、手話通訳の現場だけでなく、ろう・難聴者コミュニティの活動や、NPO法人での支援活動など、様々な場面で活かすことができます。単なる通訳者としてではなく、「カウンセリングの知識を持つ手話通訳者」として、新たな役割を見出せるかもしれません。

学びを深め、資格を取得し、それを活かすことで、私たちの仕事はさらに広がりを持ちます。

ピアスーパービジョンを、もっと効果的に

手話通訳者が集まると、「この前こんな通訳現場があってさ……」と互いの経験を共有することがよくあります。
これは、無意識のうちに行われている一種の「ピアスーパービジョン」です。

ピアスーパービジョンとは、同じ専門分野の仲間同士が、日々の業務について振り返り、学びを深めるための相互支援の仕組みです。
通訳技術の向上だけでなく、困難な場面への対処法や、倫理的な問題について話し合うことで、お互いの成長を促します。

ここに、カウンセリングの知識が加わると、ピアスーパービジョンはさらに効果的なものになります。

  • 安全な対話空間の創造: カウンセリングの知識があれば、相手の意見を頭ごなしに否定するのではなく、傾聴し、受け入れる姿勢を保つことができます。

  • これにより、メンバー全員が安心して自分の経験や悩みを話せる、より安全で建設的な対話空間を築くことができます。

  • 問題の構造化: 誰かの悩みを聞く時、カウンセリングの知識があれば、感情的な側面だけでなく、問題の背景や構造を冷静に分析することができます。

  • 「その時、どう感じましたか?」といった問いかけを通じて、話し手が自分自身の内面と向き合うことを促し、より深い気づきを得る手助けができます。

  • 建設的なフィードバック: カウンセリングのスキルは、相手を傷つけずに、かつ的確なフィードバックを伝えるためにも役立ちます。

  • 「ああすべきだった」「こうすればよかった」といった単純な助言ではなく、「次回、同じような状況になった時、どのような選択肢があると思いますか?」といった問いかけをすることで、相手が自ら解決策を見つけ出す力を引き出すことができます。

このように、カウンセリングの知識は、ピアスーパービジョンの質を高め、手話通訳者同士の相互支援の輪をより強固なものにします。

専門性を深める旅は、無限に続く

手話通訳という仕事は、一生学び続ける必要がある、奥深い専門職です。
手話の技術を磨くことはもちろんのこと、通訳現場で出会う人々の背景をより深く理解するために、心理学、社会学、医療、法律など、幅広い分野にアンテナを張ることが重要です。

ピアカウンセリングの学びは、その広大な教養の海への第一歩となるでしょう。

ピアカウンセリングから広がる、手話通訳の新たな可能性

手話通訳者がピアカウンセリングの知識を身につけ、さらに資格取得にまで至ったとしましょう。
その知識は、私たちの仕事にどのような化学反応を起こすのでしょうか。

まず、日々の通訳現場での変化が挙げられます。
例えば、病院での通訳。
医師から病名や治療方針について説明を受ける時、当事者の方が不安でいっぱいの表情をされているのを目にすることは少なくありません。
私たちは、その言葉を手話で伝えるだけでなく、当事者の不安に寄り添う姿勢を示すことができます。
具体的には、「何かご不明な点はありませんか?」といった質問の前に、「今の説明、少し難しかったかもしれませんね。
もし、不安なことや気になることがあれば、どんな小さなことでも構わないので、通訳を通して伝えてくださいね」と、一言添えるだけで、当事者の方は安心して質問しやすくなります。
この一言は、カウンセリングの基本である「安心・安全な空間づくり」に通じるものです。

また、役所での手続きや、法律相談など、当事者が人生の大きな決断を迫られる場面も多々あります。
そのような場面では、正確な情報の伝達はもちろんのこと、当事者の意思決定をサポートする「伴走者」としての役割が求められます。
ピアカウンセリングの知識は、当事者の方の「こうしたい」という気持ちを尊重し、その思いを言語化する手助けをする上で、大いに役立ちます。

さらに、このスキルは、通訳現場を離れた場所でも活かすことができます。例えば、地域のろう・難聴者サークルでの活動です。そこでは、日々の生活で抱える悩みや、聞こえる人とのコミュニケーションの壁など、様々な課題について語り合われます。
ピアカウンセリングの知識があれば、ただ話を聞くだけでなく、参加者同士が互いの経験から学びを得られるようなファシリテーター(進行役)としての役割を担うことができます。

ピアスーパービジョンの質を高める具体的な方法

先ほど述べたように、手話通訳者同士の集まりは、貴重なピアスーパービジョンの場です。
この時間をより有意義なものにするために、カウンセリングの知識を活かした具体的な方法をいくつか紹介しましょう。

1. グループの「安全ルール」を決める

ピアスーパービジョンを始める前に、「この場は、安心して自分の経験や悩みを話せる場所であること」を参加者全員で確認し、共通のルールを設けることが有効です。
「ここで話された内容は、この場限りとし、秘密を守ること」「相手の意見を否定しないこと」「アドバイスは求められた時だけにする」といった基本的なルールを設定することで、参加者は安心して発言できます。

2. 感情の「見える化」を促す

通訳現場での経験を話す際、私たちはつい出来事の「事実」を羅列しがちです。
しかし、カウンセリングの視点を取り入れると、その出来事を通して「自分がどう感じたか」という感情に焦点を当てることができます。
例えば、「あの時、当事者の方がとても辛そうだったので、私まで胸が苦しくなりました」といった感情を共有することで、他のメンバーもその経験をより深く理解し、共感しやすくなります。

3. 「なぜ?」ではなく、「どうして?」と問いかける

ある通訳場面で、当事者が予想外の行動をとったとします。
その時、「なぜ、そんな行動をとったんだろう?」と考えるのではなく、「当事者の方は、どんな気持ちでその行動をとったんだろう?」と、相手の感情や背景に思いを馳せる問いかけをしてみましょう。
これは、ピアスーパービジョンの場で、より深い洞察を得るための重要なステップです。

学びは、人生を豊かにする旅

手話通訳者という仕事は、人生の様々な局面に関わる、非常にやりがいのある仕事です。しかし同時に、多くの責任と心の負担を伴う仕事でもあります。

ピアカウンセリングやピアスーパービジョンの学びは、私たち自身の専門性を高めるだけでなく、自己理解を深め、仕事と心の健康を両立させるための大切な知恵を与えてくれます。

この学びの旅は、決してゴールがありません。
常に新しい知識を吸収し、それを日々の仕事に活かし、仲間と共に成長していく。
そのプロセスこそが、手話通訳者としての私たちの人生を、より豊かで意味あるものにしてくれると信じています。

さあ、皆さんもこの素晴らしい旅に出てみませんか?

ご覧いただきありがとうございました。

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私、あらかわいおりのメンバーシップです。メンバー限定の情報をお届けします。

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