伝えたいことは、「言葉」にしなくても伝わる
私たちは、他者とコミュニケーションをとるとき、つい「言葉」に頼りがちです。
自分の考えや気持ちを正確に伝えようと、頭の中で一生懸命に言葉を選び、完璧な文章を組み立てようとします。
でも、本当に言葉だけがコミュニケーションの手段なのでしょうか。
もし言葉がすべてだとするなら、紙に書かれた「わたしはあなたが好きです」という文字だけで、相手にその気持ちは伝わるでしょうか。
きっと、多くの人は首を横に振るでしょう。
文字からは、その言葉に込められた熱量や、相手を想う表情、声のトーンまでは伝わりません。
また、道を尋ねる場面を想像してみてください。
能面のように無表情な顔で「あー、道を尋ねたいのですが」と声をかけられたら、あなたは快く道を教える気持ちになるでしょうか。
おそらく、教えてくれる人は少ないかもしれません。
言葉は同じでも、そこに表情や声のトーン、視線といった要素が加わることで、伝わる内容は大きく変わります。
信頼は「言葉」以外で作られる
言葉以外にも、自分の意思を伝えるための大切な要素はたくさんあります。
特に、手話通訳者の方や、手話を学んでいる方には、ぜひこのことを考えていただきたいのです。
手話通訳者は、日常的に初対面の人と接する機会が多い仕事です。
必ずしも良好な関係を築けるとは限りません。
しかし、通訳者はその場のやり取りを壊すことなく、円滑なコミュニケーションが成立するように努める必要があります。
では、信頼関係がまだない初対面の人に、どうすれば「ああ、この通訳者なら大丈夫だ」と思ってもらえるのでしょうか。
それは、「心の距離を縮めること」、つまり相手に誠意を示すことだと私は考えています。
人は、表情や声のトーン（手話の場合でも、声は大事な要素です）、目線の高さなど、ありとあらゆる要素で相手を「値踏み」しているのではないでしょうか。
信用や信頼という評価を得たいのであれば、そうした相手への誠意を日頃から持ち続けることです。
そうすれば、表情や声色も自然と現れるはずです。
「心」が伝われば、技術はさらに輝く
もし、最初は警戒していた人が、別れ際に「またあなたが来てくれたら嬉しいな」と言ってくれたら。
それは通訳者として、最高に嬉しい瞬間ではないでしょうか。
これは、手話学習者や受験者にとっても他人事ではありません。
心から「伝えたい」「理解したい」と努力している人の手話は、必ず相手に伝わります。
それは、単なる技術だけではない、「心」が備わっているからです。
言葉だけでは伝わらない、言葉を超えた部分でコミュニケーションを築くこと。
それが、私たちをより深く結びつける鍵になるのではないでしょうか。
私たちは、これからもずっと、より良いコミュニケーションや、より良い人間関係を追及していくのです。
一緒に考えていきましょう。
ご覧いただきありがとうございました。
