
――知らないと起こる、でも知っていれば防げる落とし穴
手話通訳をしていて、あとから
「今の訳、失礼に聞こえなかったかな…」
「意味は合っているけれど、何か引っかかる」
そんな不安を感じたことはありませんか。
実は、手話通訳で“失礼になる訳”は、技術不足というより「視点のズレ」から生まれることがほとんどです。
そしてこれは、学習者にも、経験を積んだ通訳者にも起こり得ます。
この記事では、
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どんな訳が「失礼」に受け取られやすいのか
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なぜそれが起きるのか
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どうすれば避けられるのか
を、現場目線で整理します。
そもそも「失礼になる訳」とは何か
まず大切なのは、
失礼=言葉遣いが乱暴、というだけではない
という点です。
手話通訳における「失礼」は、主に次のような形で現れます。
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話者の立場や年齢、役割が軽く見える訳
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感情や配慮が削ぎ落とされた、冷たい訳
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本人が言っていない評価や断定を含んだ訳
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丁寧さが必要な場面で、フラットすぎる訳
意味としては合っていても、人間関係や場の空気を壊してしまう訳は、結果として「失礼」と受け取られやすくなります。
よくある「失礼になる訳」の具体例
① 丁寧さを落としすぎる
日本語の
「恐れ入りますが、少しお時間をいただけますでしょうか」
を、意味優先で
「時間 ちょっと もらう」
と訳してしまうケースです。
情報は伝わりますが、話者が大切にしている“へりくだり”や“配慮”が消えてしまいます。
結果として、
「高圧的に見えた」
「失礼な人に見えた」
という印象につながることがあります。
② 話者の感情を勝手に整理してしまう
例えば、話者が少し言葉を探しながら
「正直に言うと…悩んでいまして…」
と話している場面。
これを
「悩んでいる」
と一言でまとめてしまうと、迷いや戸惑い、言いづらさが消えてしまいます。
通訳者が“分かりやすく整理したつもり”でも、
それは話者の表現を削っていることになりかねません。
③ 評価語・断定語を足してしまう
話者が
「少し難しい状況です」
と言っているのに、
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「大変」
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「無理」
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「問題」
といった強い評価語を加えてしまうと、
話者の立場や意図を超えた表現になります。
これは、通訳者の解釈が前に出すぎている状態です。
なぜ「失礼になる訳」をしてしまうのか
原因は、大きく3つあります。
① 「正確さ=意味が合っていればOK」と思っている
通訳では、
意味+関係性+場の空気
この3つがセットです。
意味だけを追うと、丁寧さや感情が置き去りになります。
② 日本語のニュアンスを手話に落とす経験が足りない
特に学習者の段階では、
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敬語
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クッション言葉
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言いよどみ
をどう手話化するか、十分に経験していないことが多いです。
これは失敗ではなく、経験不足による自然な壁です。
③ 「分かりやすさ」を優先しすぎている
「相手に伝わりやすくしよう」という善意が、
結果として話者の人格や立場を削ることがあります。
分かりやすさと丁寧さは、必ずしも同じではありません。
失礼になる訳を避けるための3つの視点
① 「誰が、誰に向かって話しているか」を常に意識する
同じ内容でも、
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上司→部下
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利用者→職員
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医師→患者
で、求められる表現は変わります。
立場を訳に反映できているかを、常に自問してください。
② 感情や間(ま)も「情報」として扱う
沈黙、ためらい、言い直しは、
「無駄」ではなく意味のある要素です。
すべてを整理しきらず、
揺れを残す訳も、立派な通訳です。
③ 「自分がその訳をされたらどう感じるか」を考える
これはとてもシンプルですが、効果的です。
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冷たく感じないか
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見下された感じがしないか
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勝手に決めつけられていないか
一瞬立ち止まるだけで、防げる失敗は多くあります。
おわりに:失礼な訳は「気づける人」ほど成長する
「失礼だったかもしれない」と感じられるのは、
相手の立場を想像できている証拠です。
手話通訳は、
言葉を訳す仕事であると同時に、
人と人の関係を預かる仕事でもあります。
完璧を目指す必要はありません。
ただ、
「意味だけでなく、人も一緒に訳している」
その意識を持ち続けることが、通訳の質を確実に高めてくれます。
今日の通訳が、昨日より少しだけ丁寧でありますように。
その積み重ねが、信頼につながっていきます。
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